『夏は来ぬ』

詩:佐佐木信綱  曲:小山作之助

卯の花の におう垣根に
ほととぎす 早も来 鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ

さみだれの そそぐ山田に
さおとめが 裳裾(もすそ)ぬらして
玉苗(たまなえ)植うる 夏は来ぬ

橘(たちばな)の 薫るのきばの
窓近く 蛍(ほたる)飛びかい
おこたり諌(いさ)むる 夏は来ぬ

楝(おうち)ちる 川べの宿の
門(かど)遠く 水鶏(くいな)声して
夕月すずしき 夏は来ぬ

五月(さつき)やみ 蛍飛びかい
水鶏(くいな)鳴き 卯の花咲きて
早苗植えわたす 夏は来ぬ

■楽曲解説

1896年5月に刊行された新編教育唱歌集(第五集)が初出の唱歌。
ホトトギスや蛍、卯の花(ウツギの花)や橘(タチバナ)といった動植物、五月雨(さみだれ)や田植えといった風景を歌詞に盛り込み、初夏の情景を描いている。
2007年には「日本の歌百選」に選ばれた。