『浜辺の歌』

(文部省唱歌)

我は海の子 白浪(しらなみ)の
さわぐいそべの松原に
煙たなびく とまやこそ
我がなつかしき住家(すみか)なれ

生れてしおに浴(ゆあみ)して
浪(なみ)を子守の歌と聞き
千里(せんり)寄せくる海の気を
吸いてわらべと なりにけり

高く鼻つくいその香(か)に
不斷(ふだん)の花のかをりあり
なぎさの松に吹く風を
いみじき樂(がく)と我は聞く

丈餘(じょうよ)のろかい操りて
行手定めぬ浪(なみ)まくら
百尋千尋海の底
遊びなれたる庭廣(ひろ)し

幾年(いくとせ)こゝにきたへたる
鐵(てつ)より堅きかひなあり
吹く鹽風に黑(くろ)みたる
はだは赤銅さながらに

浪(なみ)にたゞよう氷山も
來(きた)らば來(きた)れ恐れんや
海まき上ぐるたつまきも
起らば起れ驚かじ

いで大船を乘(のり)出して
我は拾わん海の富
いで軍艦に乘(のり)組みて
我は護らん海の國(くに)

■楽曲解説

1910年、尋常小学読本唱歌に初出の文部省唱歌で、作詞者・作曲者ともに不詳。
歌詞については、宮原晃一郎の実の娘と芳賀矢一の義理の娘がそれぞれ自分の父や義父が作詞者であると主張しているが、宮原の原作を芳賀が改作したとする説が有力視されている。
2007年には日本の歌百選に選出された。